頭の中身をprintf

おっさんITエンジニアの頭の中身を記述するだけのBlog。なお、基本コンセプトは「理系男子」。目標としているのはHellow World!以上の文字列をはてなブログに出力すること。最近、妄想ブログになりつつあるのが悩みといえば悩み。

その仕事「ラスクトゥ」

大変ですよね


世の中で「名もなき家事」が流行っているっぽい。いや流行っているなんて言ったら世の中で粛々と家事をこなしている皆様方に失礼だろう。ようやく話題になってくれたか、って感じかもしれない。

家事は大変だと理解はしているつもりで、月に一回ほど休日に子供達と自分だけで終日留守番をしていることがある。コレもなんだよ月に一回程度かよ?とお叱りを受けるポイントかもしれないけど、幼い家族がいるとまる一日自由が効かないことを実感している、つもり。だからまあ月に一回くらいは自由にしてきなさいと送り出す気にもなる。だって本当に大変なんだもん。

問題は名も無き家事が存在することよりも、そんな家事を立派にクリアしているにもかかわらず何の手応えも無いことかもしれない。

名もなき八つ当たり


職場の話になるのだけれど、若かったころ月に一度夜間バッチ(システム夜間処理)の立会作業という仕事があった。深夜から明け方まで、お客様の翌日業務に影響が無いよう、夜間バッチに異常があったときは即座に対応、もしくは上司にエスカレーションするという重要かつ極度の睡魔や空腹と戦う必要のある忍耐が必要とされる仕事だった。

日々の業務状況を見て仕事量が多くなければ前日の日中は休んだり翌日は終日休んだり、忙しければ翌日も継続してオフィスで…とこの先は多くを語るつもりはない。いやコレも20年くらい昔の話。今だったらそんなの簡単に許されないんじゃないか。今となってはその部署から離れてしまったし現状どんなことになっているかはよくわからない。そして、語りたいのはこの「夜間バッチ監視」という立派な名前がついた仕事ではない。

ある夜のバッチ監視中、オフィスビルのトイレの帰り道で自分の席まで歩いていくと、部屋の入口にあるガラス扉の向こうに古びた数十本ものLANケーブルが机から床に垂れ下がっていた。そしてその床には可動していないペディスタイルのサーバとブラウン管のディスプレイがホコリをかぶり転がっていた。サーバもブラウン管も自分が所属する部署の所有物で、そしておそらく数十本のLANケーブルも所属部署の所有物と思われた。
f:id:macfellow-norland:20200620133006j:plain:w320

設置場所は前述の通りオフィスのガラス扉を入ってすぐ。平日は毎朝見る光景で、何人もの社員がこの景色を眺めて出社しているはずだった。そしてトイレの帰り道に、自分もこの見慣れた景色を眺めて自分の席に向かうはず、だった。ただその夜の夜間バッチ監視中は何かが違った。端的に言うと心の底からイラッときたのだ。

毎朝出勤するときやトイレの帰り道でも目に入り、誰でもガラストビラの向う側から見えるような場所に「使用されていない」サーバとブラウン管にLANケーブルが延々と放置されている。しかも、よりにもよって自分がこんな睡魔や空腹と疲労に耐える必要がある夜間バッチの監視中であるにもかかわらず、ホコリまみれの機材は堂々と自分の目に入ってきた。

人間、相当に疲弊すると見たもの聞いたもの味わったものすべて湾曲して理解したり感じたりするのかもしれない。まだ若かったワタシは他に誰もいない深夜のオフィスでただ独り、端的に言うと「ブチ切れた」

夜中にこんな醜態をさらしやがって! コイツら今すぐ俺が掃除してやる!!

…ん?

掃除ぃ??

もう一度言うようだけど人間かなり疲弊すると、物事の判断基準と判断結果もおかしくなるらしい。物静かな深夜にワタシは突如、整理整頓掃除片付けを始める気になった。いやなってしまった。

スーツのズボンがホコリにまみれ白くなってしまうのも意図せず、両端共にサーバにもHUBにも接続されていないLANケーブルを何本もたぐり寄せ巻取り、それらが集められているダンボール箱に放り込む。中には隣のまた隣のテーブルまで伸び、ご丁寧に床にガムテープで固定されフロアマットで覆われている15mはありそうな長いLANケーブルもあった。フロアマットをめくりガムテープを剥がし、巻き取ると大きなドーナッツ状の物体が出来上がりそれもダンボールに投げ入れた。
f:id:macfellow-norland:20200620133045j:plain:w320

手を汚しながら自分でも理解していた。これは八つ当たりだ。日々の業務で受けるストレスと睡眠不足に空腹に疲労が折り重なり、そこに視覚的にヒドイものを見てしまったというストレスも加わり、とにかくそれらに対して何かをせずにはいられなかった。ただその対象がホコリまみれでトグロを巻くLANケーブルに古びたサーバとブラウン管だっただけなのだ。

業務に追われる日中に誰もやるはずもなく、主的な業務でもなく、評価をされるはずもなく、汚いものを触りたがるはずもなく、結果が出るはずもなく、上司にやれと言われたわけでもなく、共感を誘うわけでもなく。自分以外からしてみれば素晴らしくどうでもいい「名もなき仕事」を深夜に独り、何かに腹を立てながら衝動的にやり始めた。

サーバを水拭きするのは怖かったので何枚ものティッシュでホコリを払い、ブラウン管とキーボードとマウスを然るべき向きに設置しなおし、電源を入れれば使えるようにした。ただし、既に用途を終えているため誰も使いやしない。サーバの隣に投げ捨てられるかのように放置されている引き出し収納もホコリを払い、然るべき向きに置き直した。引き出しの上にコマンドリファレンスを広げながらサーバで作業をしようと思えばできるような気がした。まあ、誰も使うはずが無い。

八つ当たりの清掃作業を終えたとき、深夜のオフィスで独り満足をした自分がいた。何の根拠も無いまま衝動的に取りかかった清掃作業を終え、主目的である夜間バッチの監視作業も無事正常終了を迎え、その日の仕事を終えた。そしてそのとき(今思うと本当に恥ずかしいが)明日、いや既に日付をまわっているので本日の朝、誰かこの姿に気づく社員が一人くらいいるんじゃないか。そして自分の周りで、いったい誰が片付けたんだ?と声を発する者が一人くらいいるんじゃないかとアタマの片隅でちょっとだけ、ほんの少しだけ期待した。

ああ、徹夜だからアタマが回っていないんだな?

いるワケがないじゃないか。

自己満足


その先は記憶が少しあいまいなのだけど、確か業務が忙しくて一度帰宅し午後から出社したような気がする。睡眠不足で回るはずのないアタマを奮い立たせ、例のガラス扉からすっかり片付いた姿を眺めつつ出社した覚えがある。自分はとても爽快で気持ちが良かったことは覚えているが、前述した通りこの清々しい姿について言葉を発する者など自分に聞こえる限り誰一人としていなかった。そして自分も誰に感想を求める事も無かった。夜間バッチの監視中にお前は何をやっていたんだ?と悪者を問いただす目線で理由を問い詰める者がいるかもしれない、というとても寂しい判断もあった。

ただ、自分は何故かとても満足していた。ああ、これで毎朝ガラス扉の向こう側からあのみっともない姿を眺める必要も無い。毎朝清々しい気分で出社することができる。夜間バッチの監視中に腹を立てることも無い、と。

その後、お客様との契約終了に伴い夜間バッチの監視作業が無くなり、サーバも廃棄され姿が無くなった。そのうえ自分も部署を異動し根本的にあの「清々しい姿」とは縁が無くなった。でも今でも深夜にいきなり掃除と片付けを始めたことについて、まったく後悔は無い。

ま、要は自己満足なんだろう。

名もなき家事、名もなき作業、名もなき仕事なんてのはみんな、こんな心境でやっているのかもしれない。自己満足なのかもしれない。その意義を自分の中で見つけているからできるのかもしれない。逆に自分の中での意義を失ったとき、ものすごい憎悪が湧いてきて世の中に噴出するのかもしれない。その噴出物が今の世の中ネットがあるおかげで色々な人の目に留まったんじゃないか。昔から闇に葬られてきた噴出物が、表舞台に出てきただけなんじゃないか。

おそらく噴出物を無くすことはできないだろう。だってそもそもが自己満足に依存している。スタート地点が自己満足でゴールも自己満足なのだから、自己満足できる人しかそんなことはやらない。だから名もなき家事、名も無き仕事を粛々とこなしている人は認めてあげなきゃならないんじゃないか。ある日その人が去ったとき、その存在の大きさにに気付かされるのかもしれない。自分は自らあの職場を去る前にサーバとブラウン管が先に去ってしまったけど。

認めてあげよう


さてならば、どう認めてあげれば良いのか。個人的な感覚ではあるけれど「あのLANケーブルとサーバをこんなにキレイにしてくれたんだ!ありがとう!!」なんて満面の笑みと明るい声で周りに聞こえるような大きさの声で面と向かって白昼堂々と伝えるのは間違っている。完全に逆効果だ。だって自己満足するためにやってるのだ。お前のためにやってるワケじゃ無いよ面倒くさいな、と逆に恨み節になるに違いない。名もなき仕事の結果を評価するのは自分自身なのだ、自己満足なんだから。

自分も夜中に掃除を始めたことを評価してほしいなんて思ってもいないし褒めてくれとも思っていない、いや誰か話題にしてくれやしないかとアタマをちょっとだけ過ぎったから説得力が無いけれどまあ、なんかキレイになったね、片付いたね、くらいのヒトコトくらいがあれば嬉しかったかもしれない。

だからその人を直接褒め称えてもダメなのだ。間接的に黒子的に縁の下の力持ち的に、そういえば最近散らかってないね?とか、なんか仕事が思ったより早く終わったね?とか、最近コピー機の紙が切れることが無いね?なんて世間話をその人に「聞こえるようにそっと」褒め称えれば良いのだ。自己満足に始まり、自己満足に酔いしれることができる達観した人ならば、それ以上の褒め言葉は無いだろう。念の為繰り返すが、ワタシは夜明け前に誰か話題にしてはくれないかと少しだけ期待したから決定的に達観した人では無いということが分かる。

考えてみるとこの「聞こえるようにそっと」を具現化して誰でも簡単にできるようにしている仕組みがある、SNSの「イイね!」ボタンに他ならない。スマホSNSの投稿をささっとナナメ読みして「イイね!」をタップしてはいおしまい。これだ。このさり気なさを感じさせる「イイね!」ボタンのタップこそ、自己満足を目的として大袈裟に褒め称えられることを良しとしない達観した人々に必要なのだ。笑顔で褒め称えられるよりも、何処の誰だか分からない人に匿名で押された「イイね!」の方が喜ばしいだろう。
f:id:macfellow-norland:20200620134946j:plain:w320

ならば「リアルイイね!」ボタンを設置してやれば良いのか?押しごたえのある大きなボタンと、カウントアップメータが備えられ例のサムアップしたアイコンが描かれたIoT機器があれば満足してくれるだろうか?IoT機器なんだから「リアルイイね!」の数はクラウドに連携され集計結果のダッシュボードはウェブブラウザで簡単に見ることができるようにしたらどうだ。いやいやそんな仰々しい「リアルイイね!」ボタンが自分の近くに設置されていること自体、自己満足に対しては屈辱的だろう。

ああめんどくさいなあもう、じゃあARにしてたらどうだ。社員全員が日常的にMicrosoftのHoloLens2を装着して、ある日出社したら社内数か所に「バーチャルイイね!」が現れるのだ。HoloLensなんだから特別な操作など必要なく、ただ「バーチャルイイね!」ボタンを指先でエア押ししてやればいい。ダッシュボードを見る必要だって無い。ボタンの傍らに押された回数が集計され空に浮かび表示されるだろう。まあその、日本のオフィスだからみんな大好きExcelで集計できるようにCSV出力のインターフェイスくらいは用意する必要があるかもしれない。

なお、常にオフィスでHoloLens2を装着していられるのか課題は残るが、アルミホイルを全身に巻きつけたような銀色が眩しい古いSF映画に出てくる宇宙服のようなユニフォームを全社員着ているとなお良いような気がする。

自分がそこで働きたいとは思わないが。

名も無き仕事とジョブ型雇用


さてここで気になることがひとつある。最近ネットを賑わせている終身雇用とジョブ型雇用の話だ。

終身雇用はもうできないと巨大企業の社長が明言したと話題になったりしたけど、まあそうなんだろう。変化に追いつくにはそれくらいやんなきゃならないんじゃないか。変化の少ない環境で淡々と仕事をできているならまあ、もう少し黙っていてもいいかもしれない。でも淡々と仕事ができているのも時間の問題のような気がする。新型コロナウィルスだって予期もせず押し寄せてきたんだし。

ジョブ型雇用でオフィスに年収数千万のビジネスマンが揃ったらきっと、年度の最初に目標が課せられるのだろう。今年度は数億売り上げます!業界のプラットフォーマーとしてイニシアチブを取ります!なんて威勢のいい言葉が並ぶんだろうか?

ちょっと待て、威勢がいいのは良いとして「名も無き仕事」は誰がやるんだ。

自分がやったから、って決して威張るわけじゃないけれど、サーバがホコリまみれで転がっていたりコピー機の周りにミスプリントしたコピー用紙が散乱していたら年収数千万円プレイヤーが働くオフィスとして示しがつかないんじゃないか?いやクラウド当然の今の時代にサーバが転がっている可能性は限りなく低いと言われたら反論できないが。

そんな「名も無き仕事」は清掃業者がやるから放っとけば?なんて一蹴していたら外国語で記載された大切な資料をいつの間にか清掃担当の人に捨てられたりするんじゃないか?そしたら大切な資料を放置していたくせに年収数千万円プレイヤーは激怒するんじゃないだろうか?それはあまり同情できない。

やはり年収数千万円プレイヤーにも名も無き仕事をやってもらおう。ただ年収数千万円プレイヤーは年度始めの目標に「名も無き仕事」を組み込んでおかないと重い腰を上げてくれないに違いない。勝手な想像だが。

だからやっぱり「名も無き仕事」に名前をつけよう。年収数千万円プレイヤーが威勢の良い目標を設定するときに、その他の目標に名前負けしないような名前をつけるべきだ。「オフィスクリーン」なんていう昨今の日本人が簡単に想像つくような中途半端な名前では名前負けしてしまう。え?ナニソレ美味しいの?みたいな名前が必要だ。もちろん年収数千万円プレイヤーに似合うよう最低限外国語由来の名前でなければならないだろう。

というわけでご多分にもれず英語でだけど、こんな感じでどうだろう?

  • エクスチェンジアトラッシュレシービングプラスティックバッグ
    略してExaTRPB。カタカナで表現するとエグザトリッヴ
    おお、なかなかカッコいい。毎日必ず発生してしまうゴミを受け止めるアレがいっぱいになったら交換するわけだ。
    f:id:macfellow-norland:20200620133204j:plain:w320

他にはどうだ?

もうひとついこう。

  • ブリュゥグリーンティアンドストアインリフリジュレイタァ
    略してBwGTASIR。カタカナで表現するとバゥグタズィア
    なかなか力強いじゃないか頼もしい。夏になると冷蔵庫で冷やされているアレは絶え間なく用意されている必要があるわけだから、常にこれは意識しておく必要がある。
    f:id:macfellow-norland:20200620133257j:plain:w320

つまりこうだ。年度の始めに年収数千万円プレイヤーとそのボスとの間でこんな会話が交わされるのだ。

:今半期はエグザトリッヴ100件を目標にします。
:「いや燃えるゴミの日は毎週2回あるだろう?その2倍は目指さなきゃ評価できないよ。
:ではサプテオス50本では?
:そんなにサプテオス案件があると思うのかい?あれはある意味アクシデントなんだから。
:ではエグザトリッヴ100件にバゥグタズィア200件では?
:冬季はバゥグタズィアがそれほど伸びるとは思えないが、まあ良いだろう。良い報告を待っているよ。
:ありがとうございます

うん。

これで年収数千万円プレイヤーのモチベーションアップ、間違いなしだ!!

たぶん。

世界は名も無き仕事でできている


まあそんなこんなでみんな気が付かないところで世の中の様々なところに名も無き家事や仕事がゴロゴロ転がっている。そんな家事や仕事に誰も気づかず毎日を過ごしているだけで自己満足に感謝だし、缶コーヒーのキャッチコピーで有名な「世界は誰かの仕事でできている」ってのは核心をついているような気がする。

ここはひとつ堂々とした名前がついている「誰かの仕事」だけじゃなくて「世界は名も無き仕事でできている」なんていう別バージョンも使ってほしくなる。缶コーヒーじゃなくてゴミ袋の片隅に「世界は名も無き仕事でできている」とプリントされていれば交換する度に泣きそうになるかもしれない。

サランラップの芯に小さく「世界は名も無き仕事でできている」と小さくプリントされていれば、さっきまでそこにいたはずなのに透明な世界で見失ってしまったその終端をサプテオスするのだって苦にならないかもしれない。

緑茶のティーバッグにプリントするのは抵抗がある人もいそうだから、100円ショップのティーポットに「世界は名も無き仕事でできている」とプリントしてもらおうか。それだと100円ショップのはずなのに税抜150円になるかもしれないけれど、冷蔵庫に入れる度に涙を誘うに違いない。

というわけで世界を構成している名も無き仕事に敬意を評し、感謝しつつ毎日を過ごそうじゃないか。

 
あ、そうだ。

あのときのLANケーブルとサーバの片付けをカタカナにしてみたらどうなるんだ?

  • ランケイボゥアーンドサァヴァクリィニングトゥユゥス
    略してLaSCTU
    f:id:macfellow-norland:20200620142336j:plain:w320

 
「あれー??これって誰かラスクトゥしたんだー?」

んー?

まあその。

 
…俺なんだけどねー??